国が生活保護費の基準額を引き下げたのは、生存権を保障する憲法に違反するなどとして、熊本県内の受給者36人が熊本市などを相手取り、引き下げ処分の取り消しを求めた訴訟の判決が25日、熊本地裁であった。中辻雄一朗裁判長は「引き下げは厚生労働相の裁量権を逸脱し、生活保護法に違反する」として処分を取り消した。
(※ 生活保護減額は適法 原告側の請求棄却―秋田地裁 )
原告弁護団によると、全国で起こされた同種訴訟で10件目の判決で、処分を取り消したのは昨年2月の大阪地裁以来2件目。札幌や福岡など8地裁では請求が退けられている。
判決などによると、国は2013~15年、デフレによる物価下落などを反映させるため、段階的に生活保護費の算出基準引き下げを実施。削減額は計約670億円に上った。
中辻裁判長は「厚労相が専門的知見に基づく適切な分析、検証を行った形跡は認められない」と指摘。引き下げの判断過程や手続きには過誤、欠落があるとし、「厚労相の裁量権を逸脱または乱用したものと言わざるを得ない」と結論付けた。
弁護団は判決後に記者会見し、「今後の保護基準の引き下げについても一定の制限を課し、極めて重要な意味を持つ」と強調した。
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